クラシック・バレエと、モダン・バレエ~特徴と違い、どちらを習う?~

前回は、「クラシック・バレエ」と「モダン・バレエ」について、歴史的な背景や、衣装の違い、表現の違い、などをご紹介してきました。今回は前回のまとめとしてそれぞれの特徴と「コンテンポラリー・ダンス」、さらにクラシック・バレエかモダン・バレエを習うとしたらどのように選ぶか、などをご紹介します。


2回に分けて掲載しています。 「クラシック・バレエ」と「モダン・バレエ」の違いは?

第1回目<前編>:

  • 1.クラシック・バレエの背景 ~その歴史と様式~ 
  • 2.モダン・バレエの特徴 ~衣装や表現~

第2回目<後編>:(←今回はココです)

  • 3.クラシック・バレエとモダン・バレエの特徴と違い
  • 4.モダン・バレエ その先へ ~コンテンポラリー・ダンスとは?~
  • 5.それぞれの衣装の違い ~クラシック・バレエ、モダン・バレエ、コンテンポラリー・ダンス~
  • 6.どちらを習う? クラシック・バレエとモダン・バレエ 

(文中の強調したい部分は太字、特に「クラシック・バレエ」と「モダン・バレエ」の特徴や違いに関係する部分には下線を引いています)


「クラシック・バレエ」と「モダン・バレエ」の違いは?

3.クラシック・バレエとモダン・バレエの特徴と違い (まとめ)

これまで述べてきた「クラシック・バレエ」と「モダン・バレエ」について、それぞれの特徴と違いがわかるように、まとめてみましょう。

●クラシック・バレエの特徴

  • 「見せるダンスを踊る身体」を作り上げるための厳格な規律=〈ダンス・クラシック〉技法を学んだダンサーが踊る、劇場芸術である。
  • クラシック・バレエの、クラシックというのは規範や形式美を重んじる古典主義的という意味である。
  • 大きな意味で「クラシック・バレエ」は、17世紀後半フランスで生まれ、19世紀末までに完成された、バレエの技法を基盤とした舞踊を指す言葉として用いられる。
  • マリウス・プティパが、「これぞバレエ!」という形式を作り出し、〈ダンス・クラシック〉技法がより高度に洗練されていった。
  • 演目の中に、様式性の高い群舞の踊り、高度なテクニックを取り入れたソリストたちの踊りが盛り込まれている。アダージョ、ヴァリエーション、コーダから成るグラン・パ・ド・ドゥが入っている。

●モダン・バレエの特徴

  • 「クラシック・バレエ」に対して、より自由な新しいバレエは「モダン・バレエ」と呼ばれるが、明確な定義はない。
  • クラシック・バレエの様式主義に反発し、自由な表現を追及した踊り。(バレエ・リュス(20世紀初頭に芸術に革新的な影響を与えたバレエ団)から始まったとされ、モダン・ダンスの影響も受けている)
  • それまで(19世紀末まで)のバレエで確立された〈ダンス・クラシック〉技法にはない動きを取り入れて、動きを多様化させ、ダンスの表現力を押し広げた踊り。
  • 20世紀以降に誕生した、技法や様式にとらわれず自由に身体を使って表現するバレエ作品。
(左)プティパ振付「眠りの森の美女」<クラシック・バレエ> (右)マクミラン振付「マノン」<モダン・バレエ>

4.モダン・バレエ その先へ ~コンテンポラリー・ダンスとは?~

 さらに新しくより自由度が高いのがコンテンポラリー・ダンス。コンテンポラリーは同時代のという意味で、まさに現在進行形のダンスなのです。

 1980年代フランスやベルギーを中心に新しいダンスの潮流が生まれ、やがてコンテンポラリー・ダンスとして世界に広がりました。コンテンポラリー・ダンスにも明確な定義はありません。定義できないほど多様なダンスなのです。表現の幅はさらに広がり、身体表現の限界を超えるような振付も次々と生まれています。ウィリアム・フォーサイス、アンジュラン・プレルジョカージュ、ジャン=クリストフ・マイヨーらの作品は多くのバレエ団でも上演されています。

(左)フォーサイス振付「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」(中)マイヨー振付「テーマと4つのヴァリエーション」(右)マイヨー振付「ナ・フローリスタ」

 パリ・オペラ座をはじめとするバレエ団がコンテンポラリーの振付家に作品を委嘱するようになり、バレエとコンテンポラリーの垣根(かきね)もなくなっています。以前はロシアのダンサーに抱負を尋ねると「コンテンポラリーを踊ってみたい」と答えが返ってきたものですが、今やロシアのバレエ団でもコンテンポラリー作品を上演しています。ミハイロフスキー劇場バレエの『眠りの森の美女』はナチョ・ドゥアトが新しく振り付け、クラシックとコンテンポラリーを融合させた新感覚の作品で話題となりました。

ドゥアト振付「眠りの森の美女」

5.それぞれの衣装の違い

クラシック・バレエの衣装

(例:プティパ振付「白鳥の湖」より)

モダン・バレエの衣装

(例:プティ振付「チーク・トゥ・チーク」より)

コンテンポラリー・ダンスの衣装 

(例:クルグ振付「ウィスパー」より)

<クラシック・バレエの衣装> 頭は小さく結ったシニヨン、衣装はチュチュ、トウシューズ

<モダン・バレエの衣装> クラシック・バレエの衣装やレオタードほか、衣装も髪形も自由

<コンテンポラリー・ダンスの衣装> 身体の線を見せるレオタードが多用されるが衣装も髪形も自由

 

6.どちらを習う? クラシック・バレエとモダン・バレエ

では、バレエを習う場合クラシック・バレエとモダン・バレエ、どのように選べばいいのでしょうか?

◇クラシック・バレエ 教室の特徴や発表会

 クラシック・バレエ中心の教室であれば、基礎が徹底的にたたき込まれます。幼い時から正確なポジションを身につけておけば、その先どんなダンスを学ぶときにも強みになるでしょう。シニヨンにチュチュ、リボンなど、クラシック・バレエの華やかな世界に憧れる少女も多いと思います。ただあまり小さいときには、クラシック・バレエの基礎を繰り返し練習するのは、厳しくてつまらないと感じられるかもしれません。でもそれを乗り越えて、発表会などで衣装を着けて踊る歓びは、人生の中の忘れられない一コマになりそうですね。

◇モダン・バレエ 教室の特徴や発表会

 モダン系の教室だからといってクラシック・バレエの基礎が身につかないわけではありません。クラシック・バレエにはない動きも経験できるので、自分の身体の可能性にも気づきやすくなります。反面、自由に踊る楽しさを先に知ってしまうと、大切なクラシック・バレエの基礎を窮屈に感じてしまうかもしれません。モダン・バレエの教室の発表会では『くるみ割り人形』などの定番作品ではなく、先生が振り付けた作品を踊ることが多いでしょう。振付家の意図を汲み取ったり、この動きは何を表現しているのかを考える能力が養われるはずです。早くから「表現すること」を学べるでしょう。個性も求められます。

 とにかく身体を動かすのが好き、クラシック・バレエに憧れている…など子供の性格や年齢、動機なども踏まえて教室を選ぶといいでしょう。最近はどちらの要素も取り入れている教室もあるので、レッスンや発表会を見学してよりニーズに合ったところを選びましょう。

◇プロのダンサーを目指す コンクールに挑戦

 プロのダンサーを目指すのであればクラシック・バレエ、モダン・バレエやコンテンポラリー・ダンスすべてを経験しておくことも大切です。ローザンヌ国際バレエコンクールでも、クラシックとコンテンポラリー部門があることからもわかるように、現代のダンサーはクラシック・バレエにはじまり、モダン・バレエ、コンテンポラリー・ダンス、と全く違う身体の使い方を要求される作品を次々と踊りこなさなければなりません。

 クラシック・バレエを経て、コンテンポラリー・ダンスやモダン・バレエを踊った後で、再びクラシック・バレエを踊ると、何度も踊ってきた作品でも新しい気づきがあり、決まりがある中でも表現の幅が広がるといいます。

 また、バレエの鑑賞をする観客も同様に、様々なタイプの作品を観ることで、バレエの楽しみをより深めることができるのではないでしょうか。

文・守山実花(バレエ評論家)

(※写真:光藍社過去の公演プログラム、公演写真より)


今回は、クラシック・バレエとモダン・バレエについて、それぞれの特徴と違いのまとめと、どちらを習うか?をご紹介しました。

第1回目:『クラシック・バレエとモダン・バレエ ~特徴と違い、どちらを習う?~』前編はコチラ

次回は、世界トップレベルの有名バレリーナ、有名男性バレエダンサー、世界で活躍する日本人のバレリーナ、男性バレエダンサーをご紹介します。どうぞお楽しみに。