絶対見たいバレエおすすめ映画10本!ヌレエフの伝記から草彅剛主演の日本アカデミー賞作品まで ~映画で楽しむバレエとダンス~<前編>

バレエの楽しみ方は、舞台鑑賞だけではありません。バレエやダンスをテーマにした映画には、観るだけで思わず躍り出したくなるような作品、物語や美しいシーンが心に染みる作品、偉大なダンサーの伝記など、たくさんの素晴らしい作品があります。今回は、おすすめのバレエ映画とダンス映画を特集します。あなたは、この中で何作品を観ましたか?


2回に分けて掲載します。 おすすめのバレエ映画/ダンス映画 特集

第1回目<前編>: (←今回はココです)
・バレエのおすすめ映画 10選 ―「愛と哀しみのボレロ」「ホワイトナイツ/白夜」「ブラック・スワン」「リトル・ダンサー」「ミッドナイトスワン」ほか―

第2回目<後編>:
・ダンスのおすすめ映画 12選 ―「フラッシュダンス」「フットルース」「ダーティ・ダンシング」「Shall we ダンス?」「バーレスク」「ブレイク・ビーターズ」ほか―


映画で楽しむバレエとダンス

バレエやダンスを題材にした映画作品は、数多くあります。舞台で観るバレエやダンスは、美しく優美な世界やダイナミックに踊る姿が堪能できますが、映画作品には舞台を鑑賞するのとはまた違った面白さがあります。

青春を彩るダンス映画や、舞台の裏側にある人間ドラマを描いたバレエ映画、かけがえのない人生の物語を紡いだ名作など、観客を熱狂させたヒット作品も目白押し。また、有名ダンサーが出演していたり、物語のクライマックスで圧巻のダンスシーンが繰り広げられたり、見どころもいっぱい。そんな、バレエとダンスの映画をご紹介します。

バレエのおすすめ映画 10選

バレエ映画はドキュメンタリー仕立ての映像やライブを収めた舞台映像が圧倒的に多いのですが、今回は、バレエが物語の重要なモチーフとなっている映画作品をセレクトしました。

1.「愛と喝采の日々」 

アカデミー賞ノミネート10部門の名作!愛か芸術か?2人のバレリーナの対照的な人生
バリシニコフが本作で映画デビュー。さらにABT(アメリカン・バレエ・シアター)が特別出演した作品
<1977年公開/アメリカ/ハーバート・ロス監督>

かつてライバル関係にあった二人のバレリーナ。一人は女性としての幸せに背を向けバレエに身を捧げたスターとなり、もう一人は家庭に入って娘に夢を託します。バレリーナとしての才能を開花していく娘によって、二人の葛藤が(あらわ)になります。年齢を重ねて自分の選択は本当に正しかったのかと揺れる元バレリーナ役の二人が、演技派で魅力的。

シャーリー・マクレーン、アン・バンクロフトのオスカー女優が競演し、ミハイル・バリシニコフが本格的な映画デビューを飾りました。アカデミー賞10部門にノミネート、ゴールデン・グローブ賞最優秀作品賞、監督賞を受賞した話題作。

2.「愛と哀しみのボレロ」

353

ジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」は、映画史に語り継がれる名場面!
戦争に翻弄されながら生きる著名な芸術家たちとその家族。フランス映画が誇る大河ドラマ
<1981年公開/フランス/クロード・ルルーシュ監督>

モーリス・ベジャールの『ボレロ』と、それを踊るジョルジュ・ドン。最後のシーンが圧巻!ルドルフ・ヌレエフがモデルとなっている主要登場人物をドンが演じました。この映画に登場しているバレエ作品『ボレロ』と、まるで踊りの神が憑依したような踊りを見せたドンによって、バレエに開眼した観客が数多くいます。また、ラヴェルの音楽「ボレロ」は、この映画によって再びバレエ音楽として脚光を浴びました。

20世紀、激動の時代。パリ、ニューヨーク、モスクワ、ベルリンを舞台に、2世代に渡り4つの家族が交錯します。バレエダンサーのヌレエフ、指揮者のカラヤン、シャンソン歌手のエディット・ピアフ、ジャズミュージシャンのグレン・ミラー、4人の巨匠アーティストが映画の実在モデルとなっています。

3.「ホワイトナイツ/白夜」 

バレエ・ダンス映画の金字塔。東西冷戦時代を背景に描いた大作
アメリカに亡命したバレエダンサーと、ソ連に亡命した黒人タップダンサーの2人の友情
<1985年公開/アメリカ/テイラー・ハックフォード監督>

ミハイル・バリシニコフのバレエ、グレゴリー・ハインズのタップ・ダンス、そのダンス合戦が見どころ。ソ連時代の東西冷戦が背景にありますが、ともかく二人のダンスに目が釘付けになってしまいます。ライオネル・リッチーが歌う主題歌「セイ・ユー・セイ・ミー」も大ヒットを記録してアカデミー歌曲賞を受賞しました。

著名ダンサーが旅客機で東京公演に向かう途中、エンジントラブルに見舞われてソ連に不時着。KGBに拘束され、自分とは逆にアメリカからソ連に亡命した黒人タップダンサーと出会います。亡命したロシア人ダンサーという、バリシニコフ自身がモデルになったような人物を演じました。ジャンルの違う踊りが楽しめるダンス映画ですが、バリシニコフ主演ということでバレエ映画に入れています。

【関連記事】:「男性バレエダンサーの活躍」~世界の有名バレエダンサーたち~ 
1.男性バレエダンサーの系譜~◇銀幕でも活躍した、輝かしいスターダンサーたち を参照
バレエを知る#5『男性バレエダンサーの活躍』はコチラ

\新公演情報はこちら/

<22年7月-8開催>
キエフ・バレエ・ガラ2022
<22年10月開催>
ヒューストン・バレエ 「白鳥の湖」

4.「センターステージ」 

ニューヨークが舞台の青春映画。ABTのダンサーたちが主演
マイケルジャクソンの曲に合わせたバレエや、ジャズ・ダンスほかダンスシーンがたっぷり楽しめる
<2000年公開/アメリカ/ニコラス・ハイトナー監督>

名門バレエ団として知られるアメリカン・バレエ・シアターのダンサーたちが、ずらりと登場する青春もの。アメリカらしい王道の恋愛映画ですが、実際のダンサーたちが出演しているバレエシーンや、本格的なジャズ・ダンスが見どころです。

物語の中では恋愛模様と共に、バレエ・アカデミーからバレエ団に入ってプロとして活躍できるまでの厳しさや、バレエダンサーたちの日常と練習風景、オーディションや卒業公演などの様子が描かれています。主演したイーサン・スティーフェルや、美しいジュリー・ケントなど、俳優として活躍するABT(アメリカン・バレエ・シアター)のプリンシパルたちが楽しめます。

5.「王は踊る」 

ダンスの才能にあふれた若き太陽王ルイ14世と、宮廷音楽家リュリの物語
ヴェルサイユ宮殿での撮影や豪華な衣裳、当時の「舞踊譜」が話題となった映画
<2000年公開/ベルギー・フランス・ドイツ/ジェラール・コルビオ監督>

フランスの宮廷音楽家ジャン=バティスト・リュリの生涯を描いた耽美な映画。17世紀のフランス、時の王様は太陽王と呼ばれるルイ14世。ヴェルサイユ宮殿が全面協力したロケ撮影や、バロック時代に使用された古楽器の再現、さらにこの時代のステップなどを記した「舞踊譜」を使用した振付けなど、細部にこだわった制作がされています。宮廷ダンスと呼ばれるバロック音楽で踊るダンスや、王が踊る麗しいダンスシーンなども楽しめます。

フランス王ルイ14世は、実際に現在のパリ・オペラ座の前身である王立舞踊アカデミーを創設しています。

【関連記事】:バレエを知る#1「バレエとダンス」<前編>
◇「宮廷バレエ」の隆盛─ルイ14世 を参照 
バレエを知る#1『バレエとダンス<前編>』はコチラ

6.「リトル・ダンサー」

炭鉱の町に生まれながらバレエダンサーを夢見る少年の奮闘記
この映画によってバレエを習う男の子が急増!ミュージカル化もした話題作
<2000年公開/イギリス/スティーブン・ダルドリー監督>

父は炭鉱夫、母を亡くし、バレエとは程遠い環境にいる少年ビリーが英国ロイヤル・バレエ学校に入学を果たすまでを描いた物語。ボクシングを習わされていたビリーは、練習場の近くに出来たバレエ教室を観てバレエに目覚めます。炭鉱夫の父親や兄との確執、労働者階級の貧困、男らしさの決めつけなど、自分の好きなものが受け入れられない思想や環境のなか、夢を追うビリーの姿に魅せられて絆が生まれていきます。

大ヒットしたこの映画はミュージカル化もされて、男性バレエダンサーが一般的に認知されるきっかけにもなりました。ラストで、ステージに立つ成長したビリーを演じるアダム・クーパー(ほんの一瞬登場)がお目当てで何度も観た方もいらっしゃるのでは。

7.「小さな村の小さなダンサー」 

中国の文化大革命時代に山村から連れ出された少年が、世界のバレエ団で羽ばたくまで
20カ国以上で翻訳されたベストセラーが原作。実話に基づいた感動作品
<2009年公開/オーストラリア/ブルース・ベレスフォード監督>

元オーストラリア・バレエ団のプリンシパル、リー・ツンシンの自伝を元にした実話です。毛沢東政権下の中国、山東省の貧しい農村に生まれたツンシン。北京に出てバレエの英才教育を受け、一流バレエ団のプリンシパルになる、ツンシンの半生。息子を想う母親の気持ちが切なく涙があふれます。

文化政策の一環として(おこな)った役人の各地へのスカウトにより、幼いツンシンが大好きな家族や故郷から遠く離れて厳しい訓練を受けながら次第に頭角を現わし、やがて本当にバレエに魅せられていきます。そして、アメリカへ留学し、ヒューストン・バレエの研修生として踊ることを学びながらバレエ団のプリンシパルへの道を歩みはじめます。しかし、反政府的思想を懸念する中国政府によって、自由がはく奪されようとします。バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ツァオ・チーが主演しました。

【関連情報】ヒューストン・バレエ 2022年10月来日 
公演情報はコチラ

8.「ブラック・スワン」 

「白鳥の湖」の舞台を軸に現実と幻覚が入り乱れる、心理サスペンス映画
ナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞
<2010年公開/アメリカ/ダーレン・アロノフスキー監督>

ナタリー・ポートマンが熱演し、アカデミー主演女優賞を受賞したバレエ作品。サイコ・スリラーで、実は怖い映画です。ニューヨークにあるバレエ団で「白鳥の湖」の主役に抜擢された若きバレリーナのニナ。主演プリマは、清純な白鳥と妖艶な黒鳥の演じ分けが必要ですが、真面目に育ったニナには黒鳥の演技に必要な官能性を表現できず、プレッシャーから精神的に追い詰められていきます。

母親からの厳しい束縛と期待、憧れていたベテランプリマからの嫉妬、演出家からの忠告、ライバルから役を奪われる不安、現実と妄想が入り組み、どこからが幻覚かがわからないまま舞台は進み、狂気の結末を迎えます。パリ・オペラ座の振付家バンジャマン・ミルピエがダンサーとして出演し、振り付けを担当しています。また、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)のサラ・レーンが、ボディ・ダブル (代役)を務めたことが発覚して話題にもなりました。

9.「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」 

バレエに変革をもたらした天才ダンサーの、自由と芸術への渇望
バレエ界の寵児ヌレエフの波乱に富んだ半生
<2019年公開/イギリス/レイフ・ファインズ監督>

バレエ界の至宝、ルドルフ・ヌレエフの半生を描いた伝記映画です。ヌレエフ役は、タタール国立オペラ劇場バレエ団のオレグ・イヴェンコ(ヌレエフに似ています!)。監督を務めたのは「イングリッシュ・ペイシェント」や「シンドラーのリスト」などで知られる名優レイフ・ファインズで、ヌレエフの舞踊に魅せられた彼が構想20年をかけて映画化しました。この映画には、セルゲイ・ポルーニンも出演しています。

ロシアの秘密警察KGBに厳しく監視されている最中に、オペラ座出身の振付家ピエール・ラコットなどの協力により、パリのブルジェ空港でヌレエフが亡命する、史実でも有名なシーンは手に汗握る迫力です。綿密な取材を元にして撮影されました。ヌレエフの亡命は、その後のバレエ芸術の躍進ヘと繋がっていきました。

10.「ミッドナイトスワン」 

世間の片隅に追いやられた絶望の中で、バレエが繋ぐ一筋の美しい愛の物語
孤独な魂が2人を引き合わせる。草彅剛がトランスジェンダー役で、日本アカデミー賞を受賞
<2020年公開/日本/内田英治監督>

草彅剛がトランスジェンダーの主人公役で、渾身の演技を見せました。新宿にあるニューハーフのショーパブで働く凪沙は、成り行きで育児放棄を受けてきた中学生の少女、一果と一緒に暮らす事になります。バレエに魅了されてバレエを習うため、怪しいアルバイトでお金をかせぎ、警察に捕まってしまう一果。最初は疎ましく感じつつも一果の夢を知って応援するようになり、今までに抱いたことのない感情が芽生えてバレエのコンクール会場へと向かう凪沙。

母親になろうとしたトランスジェンダーの凪沙と、バレエダンサーを夢見る一果との美しい絆を描いたこの映画は、日本アカデミー賞で最優秀作品賞、主演男優賞を受賞しました。バレエシーンがとても美しく、映画のテーマに寄り添っています。

文・結城美穂子(編集者、ライター)
構成・編集・文/光藍社編集部


バレエ・ダンスと映画の関係に注目した特集。バレエが好きなら絶対に観ておきたい、おすすめバレエ映画10選をご紹介しました。来月は、おすすめダンス映画12選を紹介します。どうぞお楽しみに。

【関連記事】

※バレエがよくわかる!バレエの成り立ちや歴史などを紹介しています。(関連作品「王は踊る」)→ 関連記事:バレエを知る#1『バレエとダンス<前編>』はコチラ

※映画でも活躍したり、映画に描かれたバレエダンサーについて紹介しています。(関連作品「愛と哀しみのボレロ」「ホワイトナイツ/白夜」「ホワイト・クロウ 伝説のダンサー」)→ 関連記事:バレエを知る#5『男性バレエダンサーの活躍』~世界の有名バレエダンサーたち~