菅井円加が、日本で『ドン・キホーテ』全幕を初披露!さらに、ウクライナ国立バレエの人気ソリストが総出演する、1日限りの贅沢なお正月公演

間もなく12月上旬から1月初旬にかけて、ウクライナ国立バレエが来日して全国各地で公演を開催します。なかでも注目されるのは、お正月1月3日(土)東京国際フォーラムで開催される『ドン・キホーテ』です。
前回の来日公演で同バレエ団の『ジゼル』にゲスト主演して絶賛された菅井円加さんが、今回は『ドン・キホーテ』にゲスト主演。菅井さんが日本で『ドン・キホーテ』の全幕を披露するのは、初めてになります。さらに、ウクライナ国立バレエのプリンシパルや人気ソリストたちが総出演して、1日限りのお正月の舞台を盛り上げます。ウクライナ国立バレエとの共演はちょうど1年ぶり、また10年以上活躍したハンブルクバレエ団からアメリカの名門ボストン・バレエに移籍したばかりの菅井さんがどのような舞台を見せてくれるのか、期待が高まります。

菅井円加 アレクサンドル・トルーシュ 🄫Holger Badekow

——2025年の年明け、ウクライナ国立バレエ来日公演のゲストで『ジゼル』のタイトルロールを踊りましたが、バレエ団に対してどんな印象を持ちましたか?

ウクライナ国立バレエとは、初めての共演でした。外部から来た私に対しても「ここはこうだよ」と教えてくださったり、演技の時も「ここを通っていいよ」と声をかけてくださったり、すごく協力的に接してくれました。みなさんとても温かく迎え入れてくださって、だから安心して踊ることができたし、舞台上でみなさんと心が通じ合えたと思っています。

——『ジゼル』ではポワントでパンシェをする大技を決め、大きな話題を集めました。

あれは私にとってもサプライズです(笑)。実は練習で1回もできたことがなかったし、やろうと思ったこともなかったので。バレエ団の活動が忙しく、パートナーのサーシャ(アレクサンドル・トルーシュ)ともなかなか一緒にリハーサルをするタイミングが取れなくて、ほぼ自主練のような状態で挑んでいました。でも時間がない中で、かなり濃密なリハーサルができたと思っています。

——2025年夏にハンブルク・バレエ団を退団し、ボストン・バレエにプリンシパルとして電撃移籍されました。ボストン・バレエを新天地に選んだ理由は何だったのでしょうか。

10年以上ドイツにいたので、本当はヨーロッパのカンパニーを考えていました。これまで習ってきた踊りのスタイル的にも、生活的にも、その方がやりやすいだろうなと思っていたんです。ただ先輩のシルヴィア(アッツォーニ)さんがボストン・バレエのディレクターと友達で、「メールを入れておくね」と言ってくれたんです。それで、クラスレッスンを受けにボストンへ行き、その場でディレクターに契約のお話をいただきました。

——17歳でローザンヌ国際バレエコンクールで1位に輝き、一躍注目されました。どこに行ってもローザンヌ1位受賞のダンサーという肩書きが付きまとう、そこにプレッシャーを感じることはないですか?

賞をいただいたときは、もうプレッシャーしかなかったです(笑)。というのも、私自身まさか自分が1位になるとは思っていなかったので。あの時は周りがクレイジーな状況で、私の名前だけが先に行っていた感じでした。そしてトップになったことで、逆に焦りが出てきました。名前に実力が伴っていないと、1番悩んだ時期でもありました。でもあの時期があったからこそ、今こうして頑張れているし、今の自分が作り上げられてきたのだと思います。もちろんそれ以降も悩みはありましたし、常に悩みはつきものです。地道に取り組んだり、がむしゃらに立ち向かったり、解決法もその時々によって違っていますが、一つ一つクリアをしています。

——ボストン・バレエでの新生活はいかがですか?

ハンブルグと比べて仕事量もリハーサル量も多く、ライフスタイルが全然違います。まずカンパニーの始まりが早く、朝9時45分から1時間半クラスがあり、15分間の休みを挟んでリハーサルが始まります。リハーサルとリハーサルの間に5分休みがあって、お昼休みが2時半から3時半。終わるのも遅くて、6時半までリハーサルです。公演中の作品のリハーサルと同時に、来年のプログラムのリハーサルも始めています。1日に3〜4つ違うレパートリーに取り組んでいる状態で、頭が大混乱しているところです(笑)。

——2026年の年明けに開催されるウクライナ国立バレエの来日公演『ドン・キホーテ』にゲスト出演されますが、キトリは明るく弾けたキャラクターで菅井さんのイメージにぴったりですね。

やりやすいキャラクターだと思います。体力もテクニックも必要な役で、大変ではありますが、それだけに達成感を感じられる役でもありますね。いろいろ試行錯誤しながら役を作っていくのも楽しみのひとつ。こういう風に工夫してやってみようかな、この部分は前面に出してもいいかなと、自分なりにあれこれイメージを膨らませています。数多くのダンサーが踊ってきているので、観客のみなさんも目がこえていると思いますが、私らしいキトリをお見せできたらと考えています。

——バジルを踊るのは、『ジゼル』でもペアを組んだ元ハンブルク・バレエ団プリンシパルのアレクサンドル・トルーシュ。菅井さんの長年のパートナーでもあります。彼はどんなダンサーですか?

普段の彼はとても面白くてチャーミングな人で、彼の踊るバジルもやっぱりチャーミング。役に対する真剣さ、取り組み方はプロフェッショナルで、とてもストイックな人だと思います。彼は今フリーランスで踊っていて、ハンブルク・バレエにゲスト出演したり、あちこちのプロジェクトに呼ばれたりと、忙しくしているようです。
私がアメリカに移った後、9月末にスウェーデンのガラで一緒に踊る機会がありました。そのとき今回踊る『ドン・キホーテ』について話しました。なかなか一緒にリハーサルができないけれど、気合いを入れて合わせていこうと思っています。そんなことができるのも、彼とだからこそです。一緒に踊る機会は少なくなりましたが、だからこそ貴重な舞台になりそうです。

——菅井さんが主演を務める『ドン・キホーテ』は年明け1月3日の一日限りで、エスパーダにはプリンシパルのニキータ・スハルコフ、街の踊り子はプリンシパルのアナスタシア・シェフチェンコ、森の女王はプリンシパルのイローナ・クラフチェンコと、ウクライナ国立バレエが誇るトップダンサーたちが総出演します。

やっぱり少しプレッシャーはありますね。自分のバレエ団でメインを踊る時もそうですが、ゲストとしてメインを踊る公演は、さらに心臓が跳ね上がるくらいに緊張します。自分が頑張らなければという気持ちと共に、バレエ団のみなさんと一緒に少しでも良い舞台を作り上げられたらと思いながら、舞台に立っています。素晴らしいダンサーの方たちが周りにいる中で踊れることに感謝しています。

——最後に、舞台をご覧になるバレエファンの方たちにメッセージをお願いします。

いつも温かくサポートしていただき、みなさまのおかげで今の私がいます。この場を借りて心からみなさまに感謝の気持ちをお伝えできればと思っています。『ドン・キホーテ』はとにかく私自身も楽しみという気持ちがあって、ご覧いただくみなさまにも同じように、ぜひ楽しんでいただけたらと思っています。

🄫Holger Badekow

インタビュー・文:小野寺悦子(ライター)

菅井円加
(ボストン・バレエ/プリンシパル)

3才からバレエを始める。2000年より佐々木三夏バレエアカデミーにて学び、様々な国内バレエコンクールに出場。2012年にローザンヌ国際バレエコンクールにて第一位とコンテンポラリー賞を受賞。ショソンドール国際バレエコンクールin Parisにてグランプリ受賞。2012年からハンブルクのナショナル・ユース・バレエに入団。2014年からハンブルク・バレエ団に入団した。2017年にソリストに昇格、2019年にはプリンシパルに昇格し、ジョン・ノイマイヤーの振付作品ほか、様々な作品で主役を務めた。2025/2026シーズンより、ボストン・バレエにプリンシパルとして移籍。さらに近年は、「ロベルト・ボッレ・アンド・フレンズ」や世界各国のガラ公演にも出演し、活動の幅を広げている。



ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)
2025-26来日公演情報

「ジゼル」
12/6(土) 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)
12/7(日) 盛岡市民文化ホール
12/9(火) 仙台銀行ホール イズミティ21
12/10(水) あきた芸術劇場ミルハス
12/11(木) 水戸市民会館
12/12(金) 市川市文化会館
12/13(土) 茅ヶ崎市民文化会館
12/14(日) アクトシティ浜松
12/16(火) YCC県民文化ホール
12/17(水) 長野市芸術館
12/27(土) 東京文化会館 
12/28(日) ウェスタ川越

「雪の女王」
12/20(土) 相模女子大学グリーンホール
12/21(日) 東京国際フォーラム
12/23(火) ロームシアター京都
12/24(水) 神戸国際会館

「ドン・キホーテ」
1/3(土) 東京国際フォーラム

<ウクライナ国立バレエ>  
150年以上の歴史を誇り、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場とともに旧ソ連における三大劇場と称されるタラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立歌劇場を本拠地とするバレエ団。古典の名作から現代作品、ウクライナならではの作品まで幅広いレパートリーを持ち、バレエ界をリードする数多くのスター・ダンサーを輩出しています。海外公演も盛んで、日本でも1972年以降来日公演を重ねて人気を博しています。