<マンガ×バレエ企画>バレエが大好きな漫画家、桜沢エリカさんに突撃インタビュー!バレエ・リュス作品を描いた経緯やバレエの魅力

バレエ漫画を読みたい!おすすめの作品は?

20世紀初頭にバレエを総合芸術まで高めた奇跡のバレエ団「バレエ・リュス」のことを漫画作品にして描いた、人気漫画家の桜沢エリカさん。多くの舞台に足を運び、バレエを観るために海外に出かけるなど、漫画界きってのバレエ好きとして知られる桜沢さんに、バレエとの出会いや楽しみ方、バレエをテーマに描いたご自身の作品についてのお話を伺いました。

■バレエ漫画『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』
バレエの歴史がよくわかるバレエ漫画!=天才ダンサー・ニジンスキーと、芸術に革新をもたらしたディアギレフの時代。衣装、美術、音楽、すべてが最先端の奇跡のバレエ団の物語。

■バレエ漫画『バレエで世界に挑んだ男』
世界の一流芸術舞台を日本に、日本のバレエを世界へ=知られざる日本のインプレサリオ(興行師)の生涯。


チケット好評発売中!2022年来日、海外バレエ公演

<バレエ×マンガ企画>
バレエ漫画作品を描いた著者に聞く、バレエの楽しみ方

【特別インタビュー】漫画家、桜沢エリカさん

楽しいバレエ鑑賞

―桜沢さんがバレエを観るようになったきっかけは何だったのでしょうか
 バレエは子供の頃から、児童文学で読んだりして憧れがありましたが、なかなか観に行く機会がなくて。本格的にバレエを見始めたと言えるのは、大人になってから。モーリス・ベジャールの作品から入りました。クラシックではなく、コンテンポラリー寄りから入ったんです。それから少しずつ、観る幅を広げていきました。首藤康之さん、シルヴィ・ギエムなどが当時好きだったダンサーですね。

―バレエを鑑賞するために、海外に行かれたりもするそうですね。
 ベジャールが亡くなった後に、ベルサイユで追悼ガラが行われ、ギエムが『ボレロ』を踊るというので観に行きました。シャンゼリゼ劇場では、アクラム・カーンとギエムの『聖なる怪物たち』も観ました。
 アクラム・カーンのカンパニーを観るために、北京にも行っています。また、イングリッシュ・ナショナル・バレエのアクラム・カーン振付の『ジゼル』を観たかったのですが、日本では、なかなか上演されなかったので、香港へも観に行きました。大好きな作品です。その後に来日公演が実現する予定でしたが、コロナ禍でなくなってしまってとても残念です。
 他には、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のケヴィン・マッケンジー版『白鳥の湖』も好きで、それが観たくてニューヨークにも行きました。マルセロ・ゴメスがロットバルト役を踊り、王子はロベルト・ボッレでした。    

―桜沢さんにとって、バレエの魅力とは何ですか?
 もちろんダンサーやバレエ作品の魅力もありますが、それぞれの劇場自体も素敵ですよね。世界のいろんな劇場に行くのが夢だったのですが、最近はコロナ禍や戦争があって難しくなっています。還暦過ぎたら老後の楽しみに、いつかロシアに行きたいと思っていたのですが。機会があればハンブルク・バレエ団の本拠地にも行ってみたいです。

バレエ漫画『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』

桜沢エリカ「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」 (祥伝社)より

―桜沢さんはバレエをテーマに漫画作品を描かれています。バレエ・リュスについて描いた作品では、歴史考証に基づいて20世紀初期の当時の雰囲気やデザインも再現されていますよね?
 当時の衣装とか、ご婦人が着ていたものなどもリサーチしました。兵庫県立芸術文化センターにある評論家の故・薄井憲二さんのコレクションの資料を見せていただき、バレエ歴史家の芳賀直子さんに早い段階から相談をして、例えばシャネルがこのバレエ作品を実際に観ていたかなどを、歴史的に検証してもらいました。
 ニジンスキーやバレエ・リュスのことは映像が残っていないので、絵にするのは苦労しましたが、想像力を駆使して描きました。

桜沢エリカ「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」 (祥伝社)より

―この漫画作品を描くきっかけは何だったのでしょうか?
 私はバレエ漫画世代で、山岸涼子さんの『アラベスク』などの作品が大好きだったので、漫画家になってからもバレエ漫画をずっと描きたいと思っていました。当時、よく連載していた雑誌の編集者に相談したら、バレエってまだ間口が広くないので難しいと言われたんです。
 でも、バレエ・リュスという切り口なら、バレエだけでなく別のジャンルともいろいろなコラボレーションがあるから、一般の人にも入りやすいのでは?と提案されまして。それでバレエ・リュスのことを調べていったら、とても面白いと思って、描くことになりました。

桜沢エリカ「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」 (祥伝社)より

―ココ・シャネルや、パトロネス(芸術後援者)として知られたミシア・セールが物語の語り手として登場して、親近感を感じさせるおしゃべりで読者を引き込む構成になっていますね。
 私はシャネルも好きで、いつかココ・シャネルについての作品を描きたいと思っていたのですが、シャネルは版権が厳しくて彼女をテーマにして漫画を描くのは難しかったのです。でもバレエ・リュスには、当時の第一線で活躍していた音楽家や画家、ファッション業界の人など、アーティストたちが多く関わっていたので、この作品の中で念願のココ・シャネルを登場させることができました。

―ご自分では、どの場面がお気に入りですか?
 ニジンスキーが踊ったバレエ作品『牧神の午後』のラストシーン、彼の腰のあたりは会心の出来かもしれません(笑)。閲覧注意のカットです。人の体を描くのは難しいですが、なかなか面白いんですよ。
 現在も残っているバレエ・リュスのバレエ作品を観ると、今上演されている作品と変わらない、当時としてはとても斬新な舞台をやっていた事が判ります。私が初めて『牧神の午後』を観た時も、100年前の人がこれを観たら、どう思ったのだろうと考えました。あの当時にこれを観たら、びっくりしますよね。この漫画を描く事で、ニジンスキーは本当に才能がある人だったんだな、と改めて認識しました。

桜沢エリカ「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」 (祥伝社)より

バレエ漫画『バレエで世界に挑んだ男』

桜沢エリカ「バレエで世界に挑んだ男」 (光文社)より

―『バレエで世界に挑んだ男』は、日本のディアギレフと呼ばれた伝説のインプレサリオ(興行師)のお話でしたね。
 東京バレエ団の創設者でもある佐々木忠次さんの評伝『孤独な祝祭』(「孤独な祝祭 佐々木忠次 バレエとオペラで世界と闘った日本人」追分日出子著 文藝春秋)が素晴らしくて。最初の数ページを読んで、絶対に漫画にしたいと思いました。こんな人がいますが、漫画になりませんか?と当時連載していた週刊誌の編集部に相談してみたら実現しました。
 彼は、いろんな賞をもらった中で、ディアギレフ賞を受賞したのが最高に嬉しかったそうです。自分自身は踊るわけじゃない。でもその美意識と信念でバレエ団を引っ張っていった方でした。

桜沢エリカ「バレエで世界に挑んだ男」 (光文社)より

―多くのバレエ作品のほか、レッスン風景や、オペラ、レビュー、歌舞伎まで登場し、特に劇場が美しく描かれています。劇場や作品を描かれるにあたってはどのような工夫をされてきましたか?
 劇場は夢を見せてくれる場所なので、私はとても大切に思っています。描くにあたっても、その夢の部分が伝わるような描き方をしたいと思っていますね。ただ劇場の中では撮影禁止のところが多いので少し苦労しました。  
 自分が行ったことがある場所はこうだったなと、集めた資料を見ながら思い出して描きました。例えば、実際に訪れたミラノ・スカラ座は、外観の地味さとは裏腹の劇場内のきらびやかさに驚かされました。スカラ座では、シルヴィ・ギエムが最後に踊った『マノン』を観て、とても感動したことを覚えています。ベルサイユ宮殿の庭園での野外公演でギエムが踊った『ボレロ』では、興奮した観客の足を踏み鳴らしての盛り上がりが印象的でした。

 『バレエで世界に挑んだ男』に出てくる劇場の中には、行ったことがないところも多かったのです。また過去の作品で、全く観たことのない作品の資料を探すのが大変でした。オペラの『カルメン』で本当の馬を使った演出が登場するのですが、この作品はぼやけた写真が一枚しか見つからず、アシスタントと相談しながら一生懸命に描きました。このマンガは週刊誌での連載だったので、締め切りに追われていたのも大変でしたね。

桜沢エリカ「バレエで世界に挑んだ男」 (光文社)より

桜沢エリカ「バレエで世界に挑んだ男」 (光文社)より

大人になってバレエを習って

―ご自身も、大人になってバレエを習ったとのことですが 
 私は長年バレエを観るだけでしたが、ずっと娘にバレエをやってもらいたいと思っていました。最初は娘がバレエに興味を持ってくれなかったので、「ママが見てこよう」、と私が大人のクラスに行って入門したら、とても楽しかったんです。それを娘に話して、クラスを見学に行かせたら、娘もバレエにはまってくれました(笑)。
 私は週に一回通うくらいだったので、週に何回も稽古する娘にはあっという間に追い越されました。今では、私は年に一回レッスンするかどうかですが、まだ続けたいと思っています。トウシューズに憧れていたのですが、履けなくて。娘がトウシューズを履いていいと許可されたときは自分の方が嬉しくて、一緒に選びに行きました。発表会の準備をするのも楽しかったですね。

―バレエを習ったことで、鑑賞法など変わりましたか?
 バレエはずっと観続けているので、バレエを習って特に見方が変わったという事はありません。でも、バレエの漫画や絵を描くときに、実際にバレエを経験したことで、身体の仕組みがわかり、とても役に立っているように思います。

―お嬢さんは、まだバレエを続けていますか?
 娘は8歳から18歳まで、10年ぐらいバレエを続けました。今はやめてしまいましたが、バレエを観るのは好きなようで、一緒に観に行くこともあります。10年間バレエを続けたことが自信になっていて、就職活動などでも、バレエで培った努力する気持ちなどをセールスポイントにしているそうです。
 彼女はバレエを続けてきたことで、手足がスラッとして腹筋もついています。私も、「その身体は自分自身の努力で作ったんだからね」と常々娘に言っています。

ヒューストン・バレエが初来日!

さて、間もなくヒューストン・バレエの初来日公演が開催されます。アメリカのバレエ団による日本公演は実に8年ぶり。桜沢エリカさんに、一足先に日本で初めて上演されるスタントン・ウェルチ版『白鳥の湖』を映像でご鑑賞いただきました。

―今回のヒューストン・バレエのウェルチ版『白鳥の湖』を観て、おすすめの注目ポイントは?
 他の『白鳥の湖』にはない面白いバージョンで、主役のオデットが早替えをして乙女の姿と白鳥の姿の両方で登場するほか、男性ダンサーががっつり踊ったり、様々な趣向が凝らしてあって見応えがある作品です。日本人のダンサーが7人も所属しているので、海外で活躍する日本人ダンサーを見る良い機会だと思います。
 日本にいながら、現地そのままの舞台が観られるのは素晴らしいことだと思います。世界のバレエを今、引っ越し公演として観られるのは、本当に嬉しいですね。

インタビュー:森菜穂美(バレエライター)

Photo:千葉秀河
協力:ナデシコプロ


桜沢エリカ
漫画家 東京都生まれ。10代でデビューして以来、コミック誌やファッション誌、テレビなど多方面で活躍中。91~93年、名作「メイキン・ハッピィ」で人気が不動に。粋なストーリー漫画を描く一方で「シッポがともだち」、「贅沢なお産」のようなエッセイ漫画にも定評がある。趣味はバレエと歌舞伎鑑賞、着物、ショッピング。バレエ関連作品として「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ」(祥伝社)、「バレエで世界に挑んだ男」(光文社)がある。


22年12月開催ウクライナ国立バレエ「旧キエフ・バレエ」
▼公演詳細はこちら▼

ウクライナ国立バレエ「キエフ・バレエ」

【2022年12月開催】
ウクライナ国立バレエ「旧キエフ・バレエ」2022

2022年12月に、ウクライナ国立バレエ「旧キエフ・バレエ」が来日し、「ドン・キホーテ」を上演します。150年の歴史を誇り、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場とともに旧ソ連における三大劇場と称されています。ヨーロッパの旧ソ連における三大劇場も我々の心に強く響かせてくれるはず。

公演:ウクライナ国立バレエ(旧キエフバレエ)
演目:「ドン・キホーテ」
日程:2022年12月17日(土)~ 2023年1月3日(火)
開催地:東京、横浜、川越、浜松、いわき、山形、市川、前橋