ツィスカリーゼに聞く、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワの魅力

「Ballet Muse―バレエの美神2021―」に出演する、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(ミハイロフスキー劇場プリンシパル)の魅力について、現在ワガノワ・バレエ・アカデミーで校長を務めているニコライ・ツィスカリーゼに伺いました。

ボリショイ・バレエのスターとして幅広く活躍したツィスカリーゼは、ヴォロンツォーワがボリショイ・バレエに入団した当初からのリハーサル教師として、彼女の育成指導を行ってきました。ヴォロンツォーワがバレエ団を代表する看板バレリーナとして活躍するようになった現在でも2人は親交が深く、ミハイロフスキー劇場バレエでしばしば共演することもあるそうです。

―アンジェリーナ・ヴォロンツォーワさんとの出会いについて教えてください。ツィスカリーゼさんにとって彼女は「愛弟子」になるのでしょうか

アンジェリーナに初めて会ったのは2008年、ペルミ・インターナショナル・バレエコンクール「アラベスク」でした。親しかった偉大なバレリーナ、エカテリーナ・マクシーモワがコンクールの審査委員長を務めていて、私に「参加者の一人の少女に是非注目して欲しい。それから、彼女がモスクワ国立バレエ・アカデミーに転校できるようにお願いしたい」と頼んできたのです。マクシーモワは、アンジェリーナがバレエ学校卒業後にボリショイ・バレエに入って、私の生徒になることを望んでいました。私の生徒は男子ばかりでしたので、アンジェリーナは私の最初の女子生徒になります。最初の子というは特別で、とても大事で可愛いものです。

―ボリショイ・バレエで、ヴォロンツォーワさんのリハーサル教師になった時のお話を聞かせてください

アンジェリーナがボリショイ・バレエ入団のオファーを受諾した時、劇場の上層部は、すぐに私に彼女のリハーサル教師になってほしいと依頼してきましたが、私が彼女を教えられるかは判りませんでした。彼女を教えたいという希望者は、大勢いたからです。それほどアンジェリーナは才能があり有望だったのです。

私がアンジェリーナとのコミュニケーションをどこから始めたかというと、全く最初からです。私はまず彼女をバレエ向きに再教育しなければなりませんでした。彼女は子供の頃に新体操をやっていて、本格的にバレエを始めたのは12歳の頃でした。本来ならバレエ学校で教師から教わるはずだったこと(低学年で教え込まれる基礎)を、もう17歳になっていた彼女に教えなければなりませんでした。しかし、彼女はそれらの全てに耐え抜いて猛練習をしました。彼女の熱意と忍耐力は素晴らしい評価に値します。

―現在のヴォロンツォーワさんは、昔と比べて何が変わりましたか?また、ツィスカリーゼさんは、今でもリハーサル教師として彼女を指導していますか

もちろん彼女はすっかり大人になりました。現在、彼女は経験豊かなバレリーナです。今でもたまに公演後に舞台袖の彼女のところに行きますが、私はあれこれと批評をするのではなく、舞台を見た印象と彼女に望むことだけを話します。だいぶ前から彼女に対して生徒としてではなく、仲間として接するようになったからです。

私はミハイロフスキー劇場バレエの「ラ・フィーユ・マル・ガルテ」で、シモーヌ役として彼女と共演していますが、この作品に出演することになったのは、もっぱら彼女のためです。彼女が最初に主演のリーズに配役されたとき、新しいバレエ団に移籍したばかりの彼女を支えるべきだと考えていましたし、私自身もこの役を踊りたいという長年の夢を叶えたかったからです。偶然から始まったことが、今も続いています。

―ヴォロンツォーワさんのバレリーナとしての魅力は、どんなところにありますか

アンジェリーナは現在、世界で最も美しくプロフェッショナルな踊り手の中の一人です。彼女のように、完璧さ、美しさ、感受性豊かな緊迫感、貴族的優雅さと魅力を持っていて、例えば「眠りの森の美女」のオーロラ姫と「パリの炎」のジャンヌのような二つの正反対の役を演じることのできる踊り手は、わずかしかいません。

日本のバレエファンの皆様が、私の愛弟子で素晴らしいバレリーナのアンジェリーナ・ヴォロンツォーワをご覧になって、彼女から喜びを得てくださるようにいつも願っています。そして、アンジェリーナがもっともっと日本で愛されて、ロシア・バレエを代表する大スターになる日を心から願っています。

ニコライ・ツィスカリーゼ 
(ワガノワ・バレエ・アカデミー校長)

グリゴローヴィチに認められボリショイ・バレエに入団後、プリンシパルとして数多くの作品に主演。ゴールデン・マスク賞、グルジア共和国名誉賞、ロシア国家賞ほか数多くを受賞。マリインスキー・バレエ、パリ・オペラ座などへの客演など国際的に活躍。ロシア人民芸術家。ボリショイ・バレエ、モスクワ・バレエ・アカデミーで指導、2014年名門ワガノワ・バレエ・アカデミーの校長に任命された。

<写真:ソリスト提供>


【2021年10月開催】
「Ballet Muses-バレエの美神2021-」

▼公演の詳細情報はこちら https://www.koransha.com/ballet/muses/

1992年~96年開催の「オールスター・バレエ・ガラ」に続き、1999年から開催した「バレエの美神(ミューズ)」は、プリセツカヤ、P.デュポン、ルジマトフ、セメニヤカ、ラトマンスキー、イレール、ゲラン、ピエトラガラ、ヴィシニョーワ、ザハーロワ、マトヴィエンコほか、時代を象徴する錚々たるダンサーが出演して話題を集めました。
その伝説の舞台が、15年ぶりに復活!今回は世界各国のバレエ団から、“今”観ておきたい旬のダンサーや飛躍を続ける若手ダンサーたちが出演します。

アリョーナ・コワリョーワ(ボリショイ・バレエ)
エレオノーラ・セヴェナルド(ボリショイ・バレエ)
倉永 美沙(サンフランシスコ・バレエ)
アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ(ミハイロフスキー劇場バレエ)
ナターシャ・マイヤー(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
デニス・ドミトリエフ(モスクワ音楽劇場バレエ)
デニス・ロヂキン(ボリショイ・バレエ)
アンジェロ・グレコ(サンフランシスコ・バレエ)
ヤコブ・フェイフェルリック(オランダ国立バレエ)  ほか

<Aプログラム>
「ライモンダ」よりアダージョ
「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ
「スパルタクス」よりパ・ド・ドゥ
「眠りの森の美女」よりパ・ド・ドゥ
「ハーモニー」より
「ジゼル」よりパ・ド・ドゥ
「ウィズアウト・ワーズ」より
「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
「シルヴィア」よりパ・ド・ドゥ
「ルミナス」
「幻想舞踏会」より
「タリスマンのパ・ド・ドゥ」

<Bプログラム>
「ライモンダ」よりアダージョ
「グラン・パ・クラシック」
「スパルタクス」よりパ・ド・ドゥ
「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
「ハーモニー」より
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
「ウィズアウト・ワーズ」より
「海賊」よりパ・ド・ドゥ
「シルヴィア」よりパ・ド・ドゥ
「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」
「幻想舞踏会」より
「くるみ割り人形」よりパ・ド・ドゥ

日程:2021年10月9日(土)~10月11日(月)
会場:東京国際フォーラムホールC、東大阪市文化創造館