Ballet Muses ₋バレエの美神(ミューズ) 2023- バレエピアニスト滝澤志野さんに聞くオリガ・エシナの魅力

元パリ・オペラ座バレエ団の大スターで、2020年までウィーン国立バレエで芸術監督を務めていたマニュエル・ルグリに才能を認められ、2011年からウィーン国立歌劇場でバレエ団専属ピアニストとして活躍する滝澤志野さん。「Ballet Muses-バレエの美神2023-」に出演する、ウィーン国立バレエのオリガ・エシナとヤコブ・フェイフェルリック(現ミュンヘン・バレエ)は、稽古場で共に時間を過ごしてきた仲間であり、滝澤さんは誰よりも近くで彼らの成長を見守ってきました。そんな滝澤さんに今回、2人の魅力について、素敵なエピソードを交えながらご紹介いただきました。


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「こんな美しいダンサーがこの世にいるのか」 私がウィーン国立バレエのピアニストになり、最も感動を覚えたダンサーの一人が、オリガ・エシナでした。麗しい容姿と華と気品、身体能力と洗練された踊り、音楽性、演技力……。まるで 『眠りの森の美女』のオーロラ姫のように、生まれながらに美徳をプレゼントされたダンサー。

10歳からワガノワ・バレエ・アカデミーで学び、18歳でマリインスキー・バレエに入団、20歳でウィーン国立バレエにプリンシパルとして移籍。以来、ウィーンのトップダンサーとして一線に立ち続けているオリガは、ウィーン国立バレエに燦然と輝く一番星のような存在です。

私は主役組の稽古を担当することが多いため、稽古場でオリガと多くの時間を共にしてきました。バランシン振付『テーマとヴァリエーション』『シンフォニー・イン・C』『ジュエルズ』、ライト版『眠りの森の美女』、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』『白鳥の湖』『ライモンダ』、ルグリ版『海賊』『シルヴィア』等、マクミラン振付『マノン』、ド・バナ振付『マリー・アントワネット』等々。彼女の美しい軌跡は、色褪せない記憶として私の脳裏に刻まれています。一般には完璧なクラシックバレリーナという印象が強いと思いますが、その身体能力と音楽性、透明感溢れる存在感に裏打ちされたモダンバレエが秀逸で、ローラン・プティ、ジャン・クリストフ・マイヨー、ノイマイヤー、キリアン、エイフマン、フォーサイス等、彼女の現代作品は洗練されていて、強く印象に残っています。

稽古場でのオリガは、常に静かに自分と向き合っているようで、「静」のイメージがあります。毅然としていて、その美しさも相まって、ともすると一見、雪の女王のような凄みがあります。しかし、その内面は思慮深く、芯が強く、正しく、賢く、優しく、母性も感じられる、素敵な女性なのです。

プライベートのオリガは、元ウィーン国立バレエのプリンシパルのキリル・クルラーエフと結婚して二児をもうけ、幸せな家庭を築いています。私は、彼らが所有している物件をお借りして住んでいたことがあり、3年ほどご夫妻に大変お世話になりました。何か困ったらすぐに駆けつけてくれて、力になってくれる最高の大家さんで、友人でもあるお二人への信頼はとても大きなものです。そのような二人だからこそ、舞台でもたくさんの方に愛されるのだと思います。
また、『アレグロ・ブリランテ』『アダージョ・ハンマークラヴィーア』『ア・ミリオン・キス・トゥ・ マイ・スキン』等、オリガの踊る作品で私がピアノソロを弾く、という思い出も沢山あります。いつも作品に真摯に向き合い、共演者やスタッフに礼儀正しく、時には言うべきことを正面からきちんと伝え、舞台では熱く物語を語り、舞台裏ではハートウォーミング、という彼女を見ていると、年下ながら学ばせてもらうことのなんと多いことかと思います。

ウィーンの綺羅星であるオリガが、あと何年こんな風に踊ってくれるのだろうと思うと、今回の日本でのガラ公演はとても貴重なもののように思います。オリガの伸びやかな踊りと演技が堪能できる『こうもり』、正統派クラシックの真髄『ライモンダ』……ウィーンで良きパートナリングを築いてきたヤコブ・フェイフェルリックと、最高の踊りを見せてくれるに違いありません。


滝澤志野(Takizawa Shino)

ウィーン国立バレエ団ピアニスト。大阪府出身。幼少よりピアノ、作曲を学ぶ。桐朋学園大学短期大学部ピアノ専攻卒業、同学部専攻科修了 。在学時よりオペラとバレエの伴奏に携わり、舞台芸術のコレペティを志す。新国立劇場バレエ団等を経て、2011年にウィーン国立歌劇場と専属契約を結び、渡欧。バレエピアニストとして専門性を深めながら、ソリストとしてもウィーン国立歌劇場管弦楽団とピアノ協奏曲を度々共演。新書館から5枚のバレエレッスンCDと、ソロアルバム「Brilliance of Ballet Music」をリリース。バレエチャンネルに「ウィーンのバレエピアニスト〜滝澤志野の音楽日記」を連載中、4年目を迎えている。



ヨーロッパの名門バレエ団で活躍中のダンサーが出演し、夢の競演を果たします!

■「親子で楽しむ夏休みバレエまつり ヨーロッパ名門バレエ団のソリストたち」
【公演期間】2024年8月3日~8月4日
【開催地】東京

■「バレエの妖精とプリンセス ヨーロッパ名門バレエ団のソリストたち」
【公演期間】2024年7月26日~8月12日
【開催地】神奈川、群馬、愛知、大阪、宮城、秋田 ほか

その他の公演情報

■ ウクライナ国立バレエ「ジゼル」ほか
25年1月開催予定 ※詳細は24年8月発表予定

■ ジョージア国立バレエ「くるみ割り人形」
【公演期間】2024年12月開催予定
※詳細は2024年7月発表予定