ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)「Thanks Gala 2023」ゲストダンサーにインタビュー!vol.1 アレクサンドル・リアブコ

ハンブルク・バレエ団のスター・ダンサーとして世界的に活躍するウクライナ出身の、アレクサンドル・リアブコが公私共にパートナーのシルヴィア・アッツォーニと共に「ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)Thanks Gala 2023」にゲスト出演します。キーウ国立バレエ学校で学び、そのルーツを今も大切にしているリアブコに、今回のウクライナ国立バレエとの共演について伺いました。


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©YUMIKO INOUE

Q. ウクライナのキーウ出身で、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースを受け心を痛めていたと思いますが、活動拠点のハンブルクでは、どのようにお過ごしでしたか?

リアブコ:ロシアによるウクライナ侵攻は、世界中の人々にとって大きな衝撃であり、ウクライナの人々にとっては大変なことになりました。ヨーロッパにいる私たちは、ウクライナのダンサーたちが舞台に立てるように支援するだけでなく、ウクライナで今本当に何が起きているかを知ってもらうために、公演などの活動を行っています。ウクライナのダンサーたちと踊るガラ公演では、戦争はいつか終わり、バレエという芸術を通して人々がまた一つになることを見せたいと思います。

Q. リアブコさんの所属するハンブルク・バレエ団では、ウクライナから避難したダンサーたちがバレエ団でレッスンをし、ハンブルクのチャリティー公演で上演された新作にも取り組みましたね。彼らの様子はいかがでしたか?

リアブコ:私にとっても、ロシアのウクライナ侵攻は大変つらいことでしたが、一方でこの状況になったことによりウクライナで踊るダンサーたちと一緒に踊る機会を得られ、彼らが素晴らしいダンサーたちで、高いモチベーションを持っていることを知りました。彼らにとっても、ハンブルク・バレエ団を見て知って新しい作品を創作する体験を得られ、大きな挑戦になったと思います。大変な状況にもかかわらず、誰もがこの経験を糧にしようと努力していました。

私たちはダンサーとして、1~2か月稽古ができないことがどんなにつらいことか実感しています。それは頭で理解しているだけでなく、自分たちの身体で実感しているのです。ダンスの世界は一つの大きなコミュニティです。世界中の様々なガラ公演などでダンサーたちは出会い、連絡を取り合っています。だから今回、誰もが自然にウクライナ人のダンサーたちを助けなければならないと感じました。

「少年の魔法の角笛」(振付:J.ノイマイヤー)を踊るリアブコとアッツォーニ。
ハンブルクで行われたウクライナのチャリティー公演にて。

Q. ウクライナ国立バレエは日本の皆様から寄せられた義援金を活用し、新たにノイマイヤー作品に挑戦します。リアブコさんも指導されるそうですね。

リアブコ:芸術監督である寺田宜弘さんは、現在新しい作品を上演しようとしていて、ジョン・ノイマイヤーの「スプリング・アンド・フォール」がウクライナ国立バレエのレパートリーに入ります。彼らは今まで主に古典作品を踊っていましたので、バレエ団の成長と発展にとって良い機会になることでしょう。ハンブルク・バレエ団の日本公演から帰国してすぐに私はキーウ入りし、団員へ振付指導を行います。彼らにはハングリー精神があり、やる気に溢れているので、5月の初演に向けて作品を仕上げるのが楽しみです。

Q. ウクライナ現地では今、公演は定期的に開催されているのでしょうか?

キーウにあるウクライナ国立歌劇場では、侵攻後それほど経っていない時から公演が再開し、今も毎週バレエ公演が行われ、いつも満席だそうです。ダンサーたちが言うには、観客からの応援も強く感じていて、再び劇場で踊ることが幸せだと感じているそうです。彼らはとても勇敢です。舞台に立つことが、今起きていることに対して戦っていることになっているのだと思います。

2023年2月には、戦争で亡くなってしまったダンサー、オレクサンドル・シャポヴァルに捧げられた公演がありました。彼はバレエ学校で共に学んだ友人で、亡くなったことは私には衝撃的なことでした。実際に知っている人が亡くなってしまうと戦争は現実であることを実感します。

Q. ウクライナで過ごした幼少期についてもお聞かせください。リアブコさんはキーウ国立バレエ学校のご出身ですが、バレエはどのように始められたのでしょうか?

リアブコ:バレエを始めたのは偶然でした。運命だったのかもしれません。キーウの郊外で育ちましたが、ある日私は母と歩いていて、母の提案でたまたま覗いてみた新しい建物がダンスの学校だったのです。そこでバレエをはじめ、10歳からはキーウ国立バレエ学校に通い始めました。学校でバレエを学ぶのが楽しくて上手くなりたいと思いました。17歳の時に、その年だけモスクワで開かれたローザンヌ国際バレエコンクールに出場しました。モスクワ開催だったので旅費が少なくて済み、出場できたのです。そして決勝に残り、ハンブルク・バレエ学校からスカラシップを得ることができました。その頃は、ハンブルクがどこにあるのかも知りませんでしたけど・・・(笑)

Q. キーウ国立バレエ学校での教育はいかがでしたか? レオニード・サラファーノフら数々のダンサーを育てた名教師のデニセンコ先生との思い出もお聞かせください。

リアブコ:素晴らしい学校でした。バレエ学校ですが通常の学業もそこで学べたのが良かったと思います。私は10歳でバレエ学校に入り、早い時間に学校の授業を終わらせて一日中バレエを学んでいました。バレエ学校では民族舞踊やヒストリカルダンス、体操、呼吸法なども学びました。バレエ団付属の学校だったので、プロのダンサーたちに会う機会や劇場の雰囲気も味わい、ウクライナ国立歌劇場の舞台に立つ機会もありました。ウラジーミル・デニセンコ先生が私に与えてくださったすべてに感謝しています。彼のおかげで一生懸命に稽古する姿勢とダンサーとしての基礎を得ることができました。私がプロのダンサーになってからウクライナで唯一踊ったのは彼の80歳の誕生日を記念した公演で、感動的でした。その時に彼と話したら、「あなたはいつもそこのバーの右端で熱心に取り組んでいた男の子だった」と覚えてくれていました。彼は2年前に亡くなる直前までバレエ学校で教えていたそうです。彼との思い出は何時も大切なものです。

「シルヴィア」(振付:J.ノイマイヤー)を踊るリアブコとアッツォーニ。「Thanks Gala 2023」で披露予定。

Q. 今度の公演には、同じバレエ学校で学んだデニス・マトヴィエンコも出演しますね。

リアブコ:彼はバレエ学校時代のクラスメイトで、良く知っています。一緒に学校公演にも出演していました。私がハンブルクに行った後は、同級生たちと音信が途絶えていましたが、6、7年前にたまたま日本で彼に再会することができ、それからまた連絡を取り合い、会うようになりました。昨年の春に同じ公演に出ましたが、その頃戦争が始まり、家族でロシアを出て大変だったと聞きました。ロシアでの生活を置いて出ていくのはつらい決断だったと思います。今回、再会できた思い出の地である日本で共演できるのは楽しみです。

Q. 最後に、今回の「ウクライナ国立バレエThanks Gala 2023」への期待と観客へのメッセージをお聞かせください。

リアブコ:夏に日本でのガラ公演に参加できることにとても感謝しています。今回の公演ではアーティストとして、すべての人々が、平和で愛のある世界で共に生きていくという希望を与えたいと思っています。舞台に立つと観客から力を与えられますが、特に日本の観客からは深い感情とつながりを感じています。ウクライナ国立バレエのダンサーたちも、同じように日本の観客からの反応や絆を感じているのだと思うと嬉しいです。
今回は、単なるバレエ公演ではなくて、私のバックグラウンドの一部である人たちと一緒に踊ることができるので楽しみです。学生の頃は将来入団すると思い、いつか踊りたいと思っていたバレエ団でした。ウクライナ国立バレエのダンサーたちと一緒に舞台に立つことで、学生時代や先生の想い出も蘇ります。この公演は感動的な経験になるはずです。

インタビュー:森 菜穂美(もりなおみ) ダンスライター、批評家、翻訳
写真:井上ユミコ、アレクサンドル・リアブコ、光藍社



ヨーロッパの名門バレエ団で活躍中のダンサーが出演し、夢の競演を果たします!

■「親子で楽しむ夏休みバレエまつり ヨーロッパ名門バレエ団のソリストたち」
【公演期間】2024年8月3日~8月4日
【開催地】東京

■「バレエの妖精とプリンセス ヨーロッパ名門バレエ団のソリストたち」
【公演期間】2024年7月26日~8月12日
【開催地】神奈川、群馬、愛知、大阪、宮城、秋田 ほか

その他の公演情報

■ ジョージア国立バレエ「くるみ割り人形」
【公演期間】2024年12月開催予定
※詳細は2024年7月発表予定