スロヴァキア放送交響楽団

中欧屈指の名オーケストラが放つ、至福の名曲コンサート。
選りすぐりの名曲に、豪華ソリストが彩りを添える。

 「中欧」という言葉には、どこか詩情を感じさせ、慎ましくも地に足の着いた人々の生活を思わせる響きがある。その中欧の一角を占める小国、スロヴァキアの首都ブラチスラヴァから同国で最も歴史のあるスロヴァキア放送交響楽団が久しぶりに日本にやってくる。実に13年ぶりだ。

 チェコ、ポーランド、ウクライナ、ハンガリー、オーストリアと国境を接するスロヴァキアだが、歴史を紐解くまでもなく、長年ハプスブルク家の影響下にあったことで華やかで洗練されたヨーロッパ文化に浸ってきた一方で、西スラブ人の地域であることの誇りと情熱も失うことはなかった。何しろ、スロヴァキアという国名自体が、「スラブ」を語源としているのだ。

 このオーケストラはその文化的な歴史と民族的な精神という両面を見事に具現化している。今回の東京公演のプログラムもそのことを表している。メインとなるのは中欧の風土の象徴とも言える作曲家ドヴォルザークの、何度聴いてもその新鮮さに驚かされる傑作交響曲第9番「新世界より」と「自然交響曲」の別名を持つ交響曲第8番。それに東隣の国ウクライナの血を引くチャイコフスキー(こちらは東スラブ人)の名作コンチェルトを組み合わせて2つのプログラムを作り、さらにはオーケストラの本拠地ブラチスラヴァからは目と鼻の先の国オーストリアはウィーンゆかりの作曲家シューベルトとベートーヴェンのこれまた名作交響曲を並べるという、スロヴァキアの地理的環境ならではの贅沢な内容だ。

 そしてこの名作揃いのプログラムをさらに「是非、聴きたい」と唸らせてしまうほど豪華なものにしているのが、日本を代表するヴァイオリニスト前橋汀子と、成長著しいピアニスト、スタニスラフ・ジェヴィツキという二人の独奏者を迎えていることだ。気鋭の指揮者マリオ・コシックともども、「熱い演奏」が期待できる、今年後半注目のコンサートだ。