チェコ・フィル合奏団のクリスマス
一曲ずつが「至福の瞬間」。
「チェコ・フィル合奏団のクリスマス」に触れると
暖かさがあなたの心の中いっぱいに広がっていく!
あの優しい響きにまた、会える
一昨年の2008年、クリスマスシーズンのコンサート。最初の曲、ドヴォルザークの「わが母の教え給いし歌」が流れ始めるや、会場は一瞬にして暖かい空気に包まれた。「クリスマスとは直接関係のない曲だけれど、何故かクリスマスの季節が醸し出す〝小さな幸せ〟を感じさせてくれるね」と多くの人が思ったはずだ。その〝小さい幸せ〟と触れ合う機会が、2年ぶりに訪れる。
チェコ・フィル合奏団にソプラノのオルガ・イェリンコヴァーを加えてのクリスマス・コンサートは、言わば、「クリスマスの 一日、チェコ・フィル合奏団の優しい音に包まれ、ほのぼのとした気持ちで心が満たされるコンサート」だ。全編、クリスマスにちなんだ曲ばかり、というわけではない。チェコ音楽が持つ情感豊かな曲を散りばめ、古今のクラシックの名曲をずらりと並べた、誰もが親しめるプログラムになっている。それでいて、コンサートの幕が閉じれば、だれもが「ああ、なんて素敵なクリスマス・コンサートなんだ」と感じ入ってしまう。いや、コンサートの途中から、気持ちが〝純〟になり、〝清〟になり、そして〝穏〟になっていくのがわかる。
弦の国チェコの音だから・・・
それもこれも、「チェコの音」のせいだ。昔も今も変わることなく称される、「弦の国、チェコ」。「チェコの弦はビロードのような音」という言い方もする。肌触りのよさを耳で感じる心地よさ。特別な楽器を演奏しているわけでもなく、特別な表現をしているわけでもない。でも、チェコの音楽家たちが演奏する音には私たちの心の襞(ひだ)にそっと染み込んでくる〝暖かい微粒子〟が、間違いなく、ある。チェコ最高のオーケストラ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の精鋭メンバーを中心に構成されているチェコ・フィル合奏団ならば、その〝微粒子〟は極め付きだ。一粒ずつが美しく、優しい表情をしている。
否応もなしに、デジタル音が次々と襲いかかってくる現代。意味もなく、騒音が溢れている社会。だからこそ、人間がまさに今、目の前で作り出す〝息づかいのある音〟、人間そのものが楽器となる〝美しい声〟に、私たちは自らすすんで耳を傾けたくなる。そんな思いを確かなものにしてくれる「チェコ・フィル合奏団のクリスマス」。クリスマスシーズンに思い出深い一日を願う人、名曲の数々に心を委ねたい人、そして広く音楽ファンが聴き逃せないコンサートだ。