レニングラード国立バレエ―ミハイロフスキー劇場―

本公演は2010年12月8日から2011年1月9日まで開催しました。

日本で愛され続けているバレエ団が贈る、来日30周年記念の引っ越し公演

初来日から30年!今年の演目とルジマトフの出演作品
  毎年恒例のレニングラード国立バレエ日本公演。今回は、初来日以来30周年記念公演に相応しく、いっそう意義深いプログラムとなっている。

  まず、日本初演となるのは、新版「ロミオとジュリエット」全幕。ヴィノグラードフ演出・振付版だ。ヴィノグラードフは、レニングラード国立バレエ首席バレエ・マスターを経て、マリインスキー・バレエの芸術監督を20年以上務めた指導者であり演出・振付家。

  実は、ヴィノグラードフ版「ロミオとジュリエット」は、30年前、レニングラード国立バレエ初の日本公演でも上演され、バレエ団の水準の高さと独自性を示した。そして今回、ヴィノグラードフが演出に手を加え、さらに完成度を高くした新版が日本で初演される。作品の、そしてバレエ団がいかにヴァージョンアップしたかを、「日本のお客様に見ていただきたい」という姿勢だ。

  さて、世紀の大スター、ファルフ・ルジマトフが、『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』『ジゼル』に出演するのも注目だ。昨年、「舞踊家」に徹したいと、芸術監督から芸術アドバイザーとなったルジマトフ。レッスンを積み重ね、バレエの道を歩み続けている彼の、その生き様そのものが表れる舞台となりそうだ。

 日本だけで演じるというジークフリート王子(『白鳥の湖』)では、その孤独な姿が胸を打つ。オデットの清純さに惹かれ、オディールの魅力に抗えない男性の、正直な心理もストレートに訴える。一方、バジル(『ドン・キホーテ』)は、ルジマトフの十八番のひとつ。気障で底抜けに明るいスペインの青年を、数え切れないほど、等身大で演じてきた。いまのルジマトフがどのようなアプローチを見せるのか、楽しみなところだ。また、『ジゼル』は、やはり、いままでに数々の名舞台を残してきた、ルジマトフの代表作。貴族という身分、婚約者がいるという立場を隠し、可憐な村娘ジゼルに近づき恋人同士となる。その真実が暴かれた時、ジゼルは悲しみの中で命を落とす。精霊となったジゼルと踊る第二幕が圧巻だ。ルジマトフ演じるアルベルトもまた、霊的なインスピレーションを得たかのように幻想的に踊る。「『ジゼル』を踊ったあとは、精神的な疲れに襲われる」と、かつて話していたルジマトフ。「だけど、踊り続けたい」とも語っていた。また歴史に残る名舞台が増えそうだ。

劇場の人気ダンサーたちが主演
 もちろん、レニングラード国立バレエのスター・ダンサーの活躍も見逃せない。看板スターとして海外でも高い人気のイリーナ・ぺレンは、『ロミオとジュリエット』『白鳥の湖』ほかに主演する予定。ルジマトフとの共演も楽しみだ。実力ナンバーワンのオクサーナ・シェスタコワは、クリスマス・シーズンの『くるみ割り人形』で愛らしいマーシャを演じる。もちろん、評価が高い『白鳥の湖』のオデット・オディールも踊る。新人サビーナ・ヤパーロワは、現地でも評判になったジュリエット(『ロミオとジュリエット』)のほか、『くるみ割り人形』などに主演。若手のボルチェンコの『白鳥の湖』、進境著しいロマチェンコワの『くるみ割り人形』も予定されている。

 毎回お馴染みのダンサーの元気な姿を見るとなんだか嬉しい。と同時に、素敵な新人を発見するとワクワクする。作品もそう。毎年の『くるみ割り人形』や『白鳥の湖』に感動し、新作に衝撃を受ける。どちらもが、レニングラード国立バレエを見る楽しみ。初来日以来30年周記念の今回も、様々な「嬉しさ」「ワクワク」が期待できそうだ。