キエフ・オペラ ~ウクライナ国立歌劇場オペラ~ タラス・シェフチェンコ記念

グランドオペラ4演目を携えて堂々の来日!
そのずっしりとした量感に圧倒される!

 その舞台に接するや、だれもが喝采の拍手を送ったウクライナ国立歌劇場オペラ、通称「キエフ・オペラ」。2010年、待望4度目の来日が決定した。

  ひときわ高い実力を持ちながら、旧ソ連邦下では国内と限られた国への公演だけで、私たちには噂が聞こえてくるのみ。ウクライナ独立後もさまざまな事情で海外公演が制限されていたが、2006年、『アイーダ』と『トゥーランドット』の2大スペクタクルオペラを携えて初の日本公演を行うと、「噂通り!スケールが大きく声も素晴らしい」との感想が渦巻いた。初来日公演では、日本全国60公演をこなし、総観客数延べ10万人という途方もない数字を残した。その後も、オペラファンの要望に応えて、2007年、2008年と3年連続で来日している。

  「キエフ・オペラ」の凄みは何と言っても、その重量感。実力と声量を持つ歌手陣、ホールに響き渡る豊かな音量の管弦楽団、ステージから分厚い波が押し寄せてくるかのような質の高い合唱団、そして演出、美術、衣装、照明とすべてが一体となって、オペラの世界を創造する。どの場面も目を凝らし、耳を傾けざるを得ない3時間余りの時間なのだ。

  4度目の来日となる今回の日本公演は、彼らの実力を存分に示してくれるグランドオペラの傑作4演目の上演となった。古代エジプトで繰り広げられる愛と陰謀の壮大な物語『アイーダ』(ヴェルディ)、伝説の時代の中国を舞台に絶世の美女ながら冷酷な心を持つ姫を巡る一大絵巻『トゥーランドット』(プッチーニ)、16世紀後半のロシアに実在した皇帝の野望と民衆の悲哀を描く超大作『ボリス・ゴドゥノフ』(ムソルグスキー)、そして男たちを惑わす「運命の女」と彼女にいつしかのめり込んで行く男の悲劇を描く『カルメン』(ビゼー)といったラインナップだ。いずれ劣らぬグランドオペラの名作揃い。中でも、『ボリス・ゴドゥノフ』と『カルメン』はこのオペラ座による、日本初登場の演目となるので注目だ。

  4作品とも、全編を通して流れる美しいアリアの数々が劇的な展開に絡んで私たちをグイグイと物語に引き込んで行く。そして気づくのは、奴隷と兵士、民衆と官司、農奴と巡礼者、女工と市民といった具合に、いずれの作品も群衆、すなわちコーラスが重要な役割を果たしていること。音楽としてのオペラの魅力は喜怒哀楽多彩な表現のアリアとともに、合唱がいかに物語を盛り上げて行くかなのだが、この4作品はまさにそうしたオペラの楽しさ、素晴らしさを堪能させてくれるもので、この歌劇場の真骨頂をよく表している。

  グランドオペラの醍醐味、ここにあり!の「キエフ・オペラ」。2010年秋の話題独占、必至だ!