ヘルベルト・シュフ ピアノ・リサイタル
鮮烈で若々しい情感にあふれ、古典から印象派までを弾きこなす。
次々に国際コンクールを制覇した、期待のピアニストが初来日!
長い芸術家人生を考えれば、若き日に国際コンクールで優勝することは、一時期の通過点でしかない。とりわけ、生涯現役として活動が可能なピアニストという芸術家は、年齢を増すにつれて、人生も音楽も熟成し、聴くものを一人のアーティストが作りだす深い世界へと導いていく。しかし、若いピアニストにとっては、国際コンクールの栄誉は飛躍のチャンスであり、一方でこれから思索と鍛練が伴う長い芸術活動への出発点となるものだ。
ヘルベルト・シュフ―わずか1年の間に、イタリア、イギリス、オーストリアの国際ピアノコンクールでそれぞれ優勝を遂げた若いピアニストが今、「次代を担うピアニスト」としてウィーンやロンドンをはじめとしてヨーロッパ中で注目を浴びている。現在、国籍を問わず有望な若いピアニストが次々と登場する中にあって、ドイツに育ち、ザルツブルクで学び、最近ではアルフレッド・ブレンデルの薫陶を受けながら、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトといったドイツ古典音楽を追究しているという、「正統派」ともいえる道を歩んできたピアニストだ。
今年29歳のヘルベルト・シュフが初来日公演に臨むに当たって選んだプログラムは、そのドイツ古典音楽からモーツァルトとベートーヴェン、そしてラヴェルの幻想的で難度の高い組曲だ。
モーツァルトのエスプリがたっぷり詰った「トルコ行進曲付き」ソナタと、ピアノという楽器が初めて感情を激白することになったベートーヴェンの「熱情」ソナタ。誰もが耳にしたことがある名曲中の名曲を、日本デビューコンサートに選ぶというのは、オーソドックスにして、内に秘めた自信が感じられるプログラムだ。
そして、ラヴェルの「夜のガスパール」。他の3曲とはまったく異質の音楽で、しかも難技巧を要求される名曲。ただ無難に演奏するだけでなく、ピアノという楽器から「表現」という可能性を最大限に引き出してこそ全体像が見えてくる音楽―それをシュフはどのように私たちに見せてくれるのだろうか?
意欲をたたえてやってくる、興味の尽きない若者を期待して待ちたい。

